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黒いポルシェの話

2013–01–07 (Mon)
ある夜、原付に乗ってコンビニへ買い物に行った。
普段通っている何でもない道だ。

僕は交通事故を起こしてしまった。

・・・寝てたのか?

僕は電信柱に激突してしまったと思った。
だが、そこにはベッコリとへこんでしまっている黒いポルシェがあったような気がした。

いや、僕は電信柱にぶつかったはずだ。
混濁した意識のまま逃げるように私はその場を後にした。

あくる朝、近所の主婦たちの立ち話を聞いてしまった。

「昨日、角に停めてある黒いポルシェが当て逃げされたそうよ。」

僕は電信柱にぶつかったと思っているが、きっとポルシェにぶつかったに違いない。
怖くなったので、地元のA町交番に行った。

「昨日、B町の小さな路地で電信柱にぶつかって、近くにあったポルシェに傷をつけて
 しまったかもしれないのですが・・・。被害届は出ていますでしょうか?」

すると、警官は記録を調べてくれた。

「そのような届出はありませんね。」

ホッとした感情もあったが、事故をしたのがB町なので、
B町の交番に行ったほうがよかったとかいろいろ悶々と考えていると、
僕は情緒が不安定になってきた。

まだ、主婦たちの噂話は続いている。
家の中にいても、罪悪感で心が押しつぶされそうだ。

結局、僕は心が壊れてしまっていた。


僕は入院することになった。


僕は入院して静穏な日々を過ごしていた。

だが、ある日、状況が一変した。

黒いポルシェの所有者が同じ病院に入院して来たのだ。
そして、なぜなのかわからないが、彼は僕が当て逃げした犯人だと知っているのだ。

彼はあの黒いポルシェがどれだけ特別なものかを僕に説明してくれた。

ボディは一枚の板から叩いて作ったフルエアロ。
エンジンは最高のエンジニアにチューンしてもらった。
その他にもいろいろ手を加えているそうだが、
途中から彼が何を言っているのか全く覚えていない。

要するに世界に1台しかない代物であることは間違いなさそうだ。

そして最後に、彼は僕にあの黒いポルシェを売ってしまった事を告げた。

僕はすぐさま土下座をして謝った。
こんなことで許してはもらえないとは思っている。
だが、僕には謝ることしか出来なかった。

しかし、驚くことに彼は僕を許してくれたのだ。

僕は放心状態になってその後のことを全く覚えていない。
いつの間にか彼は退院していた、どこに行ったのかもわからない。
ただ、彼は僕を許すためだけに来てくれたのかもしれない。


いまだ、僕は入院している。



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Author:Kim
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現在、しがない事務職
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